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贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ

2012年5月 6日 09:57

とりわけ日本は、先進諸国のなかでも例外的に贈答儀礼をよく保存している文化として、世界中の研究者から注目されてきた。しかもたんに保存しているだけでなく、バレンタインデーやホワイトデー等々のように、新たな贈答文化を次々と再生産しているという点でもきわめて特殊なポジションを占めている。(P.5)

子どもと本屋に行った時に、ちょっと気になったので思わず手に取った一冊です。贈答取引と言うかそういう市場の展開を書いてある本。大変学びになったけれど、解説を書くほど消化してないので、まずはメモを羅列して終了。
ちなみに実に面白いです。日本の中世への理解が大きく変わります。是非ご一読を。

中世の人びとにとって人徳の「徳」と所得の「得」はほぼ同義語ととらえられていた。(P.11)

贈与と税の関係、あるいは贈与から税への転化という現象は、義務的な贈与の成立を考えるうえでも検討の価値があろう。(P.14)

「君が催促したわけでもないのだし、くれるものはもらっておけばいい」(P.64、受け取るいわれのないお金に対し辞退する青年貴族へ)

恒例化した贈与はもはや「賄賂」ではなく、当然の報酬になるという観念である。(P.69)

人事の季節になれば、臆面もなく自分の実績を謳いあげ、官位の昇進を望んだが、それがかなえられなければ、病と称して何ヶ月でも家に閉じこもるということを平気でやった。(P.81)

中世とは、一年中さまざまな事由の贈答品がかなりのタイムラグをともないながら飛び交っていた時代である。(P.92)

それまで年貢として現地を船出していた生産物が、代銭納制普及以後は商品として船出するようになったということである。(P.110)

流用された贈答品は、売却されたばあいと異なり、商品市場を経由することがない。まさに贈与経済内部で贈答品が循環する構造をとっているのである。(P.124)

中世日本では銭自体もれっきとした贈答品になりえたのであり、かりにこの返礼が銭によってなされていたとしたら、私たちはこれを売買と区別するすべがあっただろうか。(P.129)

寺院の修理費があといくら不足しているから、あと何回御成を増やせばよいという計算も可能になった。とくに八代将軍義政は恐るべき頻度で禅宗寺院への御成を繰り返したが、これは信心深さによるのではなく、明らかに集金活動であった。(P.138)

贈り物の使用価値が重視されないのであれば、もはや現物で贈与をおこなう必要はなく、純粋に交換価値だけ運ぶ物品を贈り合えばよいということになる。(P.141)

贈答のような儀礼的な場面では「文」や「貫文」ではなく「疋」を使うのが一般的だった(P.146)

折紙のシステムがもたらした第二の利点は、いわゆる贈り損がなくなったことである。中世において贈与はしばしば嘱託であり、賄賂であった。もし贈与したにもかかわらず、受贈者が期待にこたえてくれなければ、贈与者にとっては贈り損になる。折紙のシステムは、贈与者をそのようなリスクから救済する効果をもたらしたのである。(P.152)

一方では贈答をはじめ、息の詰まるような儀礼や作法が生活のすみずみまで支配していたのにかかわらず、その内実をみると、案外合理的に営まれていたりもする。その実態を一言でいえば、極端な形式主義ということもできよう。(P.157)

贈与の非人格化は、贈与者と受贈者のパーソナルな関係から受贈権を切り離し、第三者に与えうるところまで進行した(P.161)

貞成はあまりにも折紙を濫発しすぎたために、督促をうけてもそれがいつのどの折紙をさしているのかさえわからない状態に陥っていた。(P.164)

中世の人びとは、さまざまな経済関係や、ときには人間関係に近いものさえ、文書化しさえすれば自由に譲渡できると考えていたふしがある。(P.168)

インパーソナルな関係とは要するに"替えが利く"関係ということであるから、中世の人びとは人間の個性というものをあまり信じていなかったのだと。(P.172)

贈与には、それを越えられると贈与であることをやめざるをえなくなるような"譲れぬ一線"というものがあって、それが最後の最後のところで功利主義との決別を避けがたいものにしたのだろう。(P.174)



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