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黒龍の柩

2009年7月18日 11:07

「俺は遅すぎたとは思っていない。道は、まだあるはずだ」(上P.28)

幕末新撰組ものですが、実は林蔵の貌の続編です。主人公は土方歳三ですが、まさかあの新撰組の動きまで、この世界観で一貫してやり通しちゃうってのは、北方小説の筆力とでも言うべきでしょうか。
山南、沖田、近藤と順次、盟友を失いながら、京都から北海道独立国を目指して榎本艦隊とともに北へ北へと向かうお話。西郷隆盛の人物像をああいう風に書き換えちゃうのは、さすがと思える。そりゃ敵側から見たらそうだよな。終わった歴史の中で見るから偉人だけど。

それにしても、よって立つ場所なく最後まで流れ続けた土方。なんとなく、こういうことを書かれると、今の自分もどうしたものだかと思います。

こんな時勢の中で、拠って立つ場所をすぐに求めてもいいのか。まずは、ひとりで生き時勢に流されてみるべきではないのか。流されることで、なにかが見えてくる。拠って立つ場所を求めることで、なにかを見落とす。(上P.40)

いま、まさにそろそろどっかに拠って立とうかと。そんなたいそうな者ではないですけど。とはいえ、たぶん人生どんな勝負をしても、こういってくれる肉親がいることが大切なんじゃないかと。

「京で、どれほど厳しい時勢の流れの中にいるのか、日野の田舎にいるわしには、わからん。ただ、身内としてひとつだけ言う。歳さん、あんたには帰る家がある。つまり、日野の家だ。もし、なにかあった時は、それを思い出してくれ」
(中略)
「わしは、自分がなにができるか考え、どう考えても、こんなことしか言えなかった。情無いと思うのだが」
「兄上、なによりのお言葉です。心に、しみこみました」
(上P.361)

で、もっというと、そういう田舎の後方でつつましい人生を送ることの大切さというのは、そういう勝負をする生き方をすればするほど見えてくるもののような気がします。でも、勝負をするのなら

「ないものを、口にしてなんになる。ただの愚痴だろう。愚痴で戦などできはしない」(下P.404)

「夢が、すぐに実現することはない。夢を見て、すぐに豊かな国が作れると思うのは、間違いだ」(上P.416)

「戦に損害は当たり前ではないのかな、榎本さん」(下P.254)

「実戦を積んでいるということは、なににも代え難いと思います」(下P.275)

やはり、天才は必要なのだ。凡愚だけがあつまれば、いつまで経っても、こういう不毛な会議が続く。(下P.317)

この辺は頭において気長に前向きに戦い続けないといけないなと。それにしても、相変わらず、抜書きのメモだけたくさん残ったな。そのまま残しおくか。

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最後の最後に燃えるものを見つけた人生は、幸福と言うべきなのか。(下P.272)
「なにも考えず、ただ斬れと言われた相手を斬れますか。それでは道具です」(上P.186)
「あの四人を斬ったのは、小栗様ですから」/「私が?」/「小栗様を、斬ろうとして襲ってきた者たちです。私ひとりなら、斬らなかったどころか、言葉を交わすことさえなかったでしょう。だから、小栗様が、土方歳三という刀で、あの四人を斬られました」(上P.367)
「つまらぬな、幕臣は。私は、坂本のように浪士でいたかったよ」(上P.375)
「古さにしがみつくのなら、それはそれでいい。力にはなるのだ。(中略)しかし幕臣は、自分のいまの立場だけを守ろうとする者ばかりだ。私が幕府に絶望するのは、そういう者が多すぎるからだ」(上P.194)
「なぜだ?」/「なぜでもだ。おまえの夢のために、俺の命など、屑のように使ってくれていい。」(上P.47)
「隊士に慕われる役回りは、俺ひとりで十分ではないか、土方」(上P.84)
「新選組とともに死ぬ。おまえに、そんなことは考えて欲しくないのだ、土方」(上P.89)
時勢の流れは、人を変える。(上P.94)
「七年も前に、刀は捨てました。幸い、刀より包丁の遣い方の方がうまかったもんで」(上P.154)
「彼らは、財力を持っている」/「だから、なんだ。国あっての、財力だろう。その国が、いま乱れようとしている。乱すほうに与するのか、収拾する方に力を貸すのか、見きわめるのにいい機会ではないか」(上P.220)
「人は、生きたいから、いろいろ考える。死に方を決めてしまえば、余計なものは見なくなる」(上P.254)
「隊務に励むことこそが、私の誇りでした」/「男の誇りは、ほかにもある。俺はそう思うぞ、総司」(上P.308)
「近藤さん、あんたは俺と決別する、と言っているのか?」/「歳、おまえと俺は、終生の友ではないか。多少、生き方が違ったとしても、友であることに変わるはずはない」(上P.477)
「その時は、語りたい。だから、死んで貰いたくないのだ。このままでは、俺は自分が許せんと思う」/「気にするな、歳と俺の仲だ」(下P.103)
蝦夷地の大地を踏みしめ、空を仰ぎたかった。(下P.154)
「強いお方です、土方様は」/「強いのではない。このまま終わっては、先に死んだ者に顔むけができんと思ってな」(下P.343)
「わしはな、土方」/「夢はともに抱けても、墓場はひとりきりのものです、村垣様」/「そうか、ひとりきりのものか」/「私は蝦夷地へ戻ります」/「夢の続きが、おまえにはあるのか」/「もともと夢などなかったようなものだ、と私は思いはじめています。しかし、闘い続けてきた自分はいます」/「そうだな。確かに、おまえは闘い続けてきた」/「なぜ、夢など抱いたのか。それも、考えました。夢以外の明日は、見えなかったからだろう、と思います」(下P.357)
「おまえにも罰を与えよう。生き続けること、天に与えられた命が尽きるまで、死にむかわず、生き続けること」(下P.383)
「知らなかったことにしておいてくれ、榎本さん」/「政府としてはだな」/「なにか言うことがあるなら、聞こう」/「いや、知らなかったことにしたい」(下P.397)
死ぬつもりの闘いはしない。降伏もしない。それは、自分ひとりのことなのだ。(下P.438)
「土に還る。いい言葉ですな。死んだら、名なしも土方歳三もない。ただの土に還る。みんな、同じ土で、土であることすら考えてもいない」(下P.447)

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